オススメ映画【マイナー国の映画編】
メジャーな映画製作国といえば、どこを思い浮かべますか?
少し古いデータですが、2017年の国別製作本数ランキングは以下の通りです。
・インド
・中国
・アメリカ
・日本
・韓国
・フランス
・イギリス
・スペイン
・ドイツ
・アルゼンチン
・イギリス
・メキシコ
・イタリア
<参考:https://www.globalnote.jp/post-12665.html>
今回はあえて、上記に入っていない製作国のオススメ映画を紹介していきます。
というのも、僕は一時期、ストーリーやジャンルではなく、製作国で観る映画を選んでいたこともありました。
自分が旅オタクだからってこともありますが、その国の雰囲気を感じることができるし、何より、隠れ優良映画を見つけるのに手っ取り早いんですよね。(笑)
多くの日本人が未開拓の分野を攻めるのって、宝探しみたいでワクワクします。
13位『サウルの息子/Saul fia/2015/ハンガリー』
ゾンダーコマンドとしてアウシュビッツで働く、ハンガリー系ユダヤ人、サウルの話。
ゾンダーコマンドとは、ナチスによって選抜された、収容所で死体処理に従事する特殊部隊のことです。
この映画では、常にサウルを追いかける独特のカメラワークが徹底されていることが印象的です。常にサウルのみにピントが合っており、背景はほとんどぼやけています。アウシュビッツが舞台として選ばれ続けながらも、常にストーリーとしても映像としても、遠景として描かれている、他にはない表現方法が新鮮です。
12位『オーバー・ザ・ブルースカイ/The Broken Circle Breakdown/2012/ベルギー・オランダ』
ヨーロッパ版『ブルー・バレンタイン』とも称される映画。
アメリカに憧れるミュージシャンのディディエと、タトゥーデザイナーのエリーゼ。
バンド活動も順調で、幸せいっぱいの家族。ところが、難病の娘を失ったことをきっかけに全てが崩壊に向かう、というストーリー。
悲しいストーリーと、明るいカントリーミュージックのコントラストが好きです。
11位『少女は自転車にのって/WADJDA/2012/サウジアラビア』
サウジアラビアといえば、中東で最もイスラム教の戒律が厳しく、女性の人権も最低レベルと言われています。(女性の一人歩きや車の運転を禁じている、等)
ちなみに、この映画が公開される前は、女性が自転車に乗ることすらも禁止されていたそう。
*現在は特定の条件下でのみ、許可されているそうです。
そんな戒律が厳しい環境下で、自転車に乗りたいと願う一人の少女が、壁にぶつかりながらも、奮闘するという感動作です。
この映画が巧いなと思った点は、2つあります。
まずは、『女性も車の運転ができるように』という本女性監督の願いを、車を自転車に置き換えることで、子供の純粋さによって巧妙に隠蔽できているところ。(この映画における自転車は車のメタファー)
また、イスラム戒律の厳しさを強調したり、批判しているわけではないという点も重要です。戒律の厳しさをさりげなく日常生活に落とし込み、厳しい戒律を強いる母親や学校の先生を決して悪く描いているわけでもありません。
女性が声を挙げることが困難な環境下で、主張を巧妙に隠蔽することで、あくまでさりげなく、ソフトに女性の権利を芯をもって主張する。めちゃめちゃオシャレな技法ですよね。日本人として日本で暮らす僕にとっては、全てが新鮮な映画でした。
10位『裸足の1500マイル/RABBIT-PROOF FENCE/2002/オーストラリア』
オーストラリアへのイメージが大きく変わる映画です。
オーストラリアって今でこそはホワイト国家、みたいなイメージがありますが、かつては白豪主義政策であったり、先住民アボリジニの隔離政策を行うなど、かなり酷いことをしていました。
本作は、アボリジニ隔離政策の元で、白人とアボリジニのミックスの少女3人が家族の元から引き離され、白人として英語やキリスト教教育を受けるという、実話に基づくストーリーです。家族の元へ帰りたい彼女たちは、1500マイル(2400キロ)もの道をひたすらに歩き続けました。
大学の授業で初めて観た時の衝撃は忘れられません。
9位『ラジオ・コバニ/Radio Kobani/2016/オランダ』
シリア北部のクルド人の街、コバニ。2014年にISISの占領下となり、クルド人部隊との激しい戦闘により、コバニの街は瓦礫と化してしまう。
2015年のISISからの解放後、20歳の大学生ディロバンが、ラジオ放送を使って街の再興に奮闘する物語。
「未来の我が子へ。戦争に勝者などいません。どちらも敗者です。」
瓦礫の中から生まれる一筋の希望に心が震えるドキュメンタリー映画です。
8位『灼熱/ZVIZDAN/2015/クロアチア・スロベニア・セルビア』
アドリア海の真珠と呼ばれ、多くの観光客の憧れとなっているクロアチア。
そんなクロアチアですが、かつては「ヨーロッパの火薬庫」とも称されたバルカン半島に位置することから、複雑で暗い民族対立の歴史を抱えています。
これは、クロアチア紛争を題材にした、3つの時代と2つの民族と1つの愛の物語。
クロアチアがユーゴスラビア連邦からの独立を宣言し、クロアチア人とセルビア人の対立が深まったことで紛争が勃発した1991年を皮切りに、紛争が終結した2001年、そして、現代の2011年の3つの時代を舞台としています。
そして、3つの時代の異なる愛のエピソードを同じ俳優が演じる、という新鮮な構成になっています。
その内容や構成もさることながら、息を呑むほど美しい映像も印象的です。
こういうヨーロッパの小国の映画って、予算どうこうよりも技法とか発想で新しいものを作ろうとしている姿勢が伝わってくるので、好印象を抱いています。
現在、クロアチア人とセルビア人は、お互いのことをどう思っているのでしょうか・・・・リアルな意見が知りたいところです。
余談ですが、こういう映画を観ると、世界史とか地理を最低限勉強しといて良かったな~って高校生の頃の自分に感謝したくなります。簡単な予備知識がないだけで、その映画の素晴らしさを理解できないって、もったいないことですもんね。
7位『ハートビート/High Strung/2016/ルーマニア』
バレエ×クラシック×ヒップホップが融合したエンタメムービー。
舞台は夢の街ニューヨーク。プロのバレエダンサーを夢見て上京してきたルビーと、生活のために地下鉄で演奏をする、イギリス人バイオリニストのジョニーの出会いから、ストーリーは動き始めます。
チープなジャケットからは想像できないほど、映像とダンス、音楽のかっこよさに度肝を抜かれます。ストーリーはご都合主義なところだらけですが、この映画においてはそんなことどうだって良いと思えるほど、カッコいいです。
6位『黙して契れ/HERMANO/2010/ベネズエラ』
サッカー選手を夢見ながら、危険なスラムで生活する兄弟を描いた映画。
兄を尊敬する弟、ダニエルと家計を支えるためにストリートギャングの手先として、犯罪行為に手を染める兄、フリオ。
スラムを舞台にした家族の愛や絆、犠牲に胸が苦しくなります。
5位『幸せなひとりぼっち/En man som heter Ove/2015/スウェーデン』
妻を亡くし、希望を見出せなくなっている頑固で無口な老人のオーヴェ。
そんな彼の隣にある家族が引っ越してくることで、再び生きる希望と人生を見つめ直していくという、ユーモアと希望、涙で溢れた良作。
頑固で神経質なオーヴェに最初はイライラするかもしれませんが、映画が進むにつれ、彼のどこまでも強い正義感や人としての魅力に徐々に引き込まれていきます。
北欧の良質なハートフルムービーです。
4位『別離/JODAEIYE NADER AZ SIMIN/2011/イラン』
離婚の危機を迎えたとある夫婦とその娘、その問題に巻き込まれるもう一つの家族。
巧みな人物描写に加えて、介護問題や格差社会問題、宗教観、倫理観、嘘、真実、など様々な要素が複雑に絡み合って、現代社会に生きる我々の心を大きく揺さぶります。
映画好きの間では傑作との声も多く、かなり見ごたえのある映画です。
イラン映画、恐るべし。
3位『シティ・オブ・ゴッド/Ciudad de Dios/2002/ブラジル』
1960年代、リオデジャネイロにある、神の街(シティ・オブ・ゴッド)と呼ばれたスラム街を舞台に、3人の少年ギャングの半生を描いた映画。
手に汗握るシーンが多く、冷房の効いた部屋でこのような世界を見れることに感謝するばかりです。
ギャング/アクション映画としても人生ベスト10には入るレベルで好きです。
2位『おやすみなさいを言いたくて/A Thousand Times Good Night/2013/ノルウェー・アイルランド・スウェーデン』
世界中の紛争地帯を飛びまわり、命掛けの取材を行う、女性報道カメラマンのレベッカ。
そんな彼女には報道カメラマンだけではなく、もう一つ"普通の母親"という顔もあり、危険地帯で強い使命感をもって活動するレベッカに夫や娘も理解を示しています。ですが、そんなレベッカの身を案ずる一家にも気疲れが見えはじめ、彼女に反感すら覚えるようになってしまいます。
愛する家族と使命感のある仕事、という人生の究極の選択。
「おやすみなさい」という何気ない一言に込められた願いや想い。
この邦題を考えた人のセンスに脱帽です。
家族との時間を大事にする北欧でこのような映画が作られた事にも、非常に意義があると感じます。
1位『Once ダブリンの街角で/Once/2007/アイルランド』
ジョン・カーニー監督の初期作。
アイルランドのダブリンでストリートミュージシャンとして活動する"男"とチェコ系移民の"女"が、ふとしたことから出会い、心を通わせていく、音楽×ラブストーリー映画。
多くのシーンがハンドカメラで撮影されているので、映像がブレていたり、画質も粗かったりと、映像としての完成度で言えば、決して高いとは言い切れません。
ですが、その粗削りな部分が逆にリアリティやエモーショナルさを醸し出してくれてるように感じます。優しいオリジナル音楽も良い。
一番好きなシーンは、女がチェコ語で男にある大事なことを言う場面。
アイルランド人の男はチェコ語が理解できないのですが、大半の観客もそう。にも関わらず、ここのセリフだけ字幕が付けられていないんですよね。
このセリフがこの2人の関係性の鍵となるんですが、ここに敢えて字幕を付けず、観客が男に感情移入できるようになっています。すごく粋な演出です。
粗削りだからこその美しさ。自信をもってオススメします。
全部を紹介しきることはできませんでしたが、気になったものがあれば、是非観てみてください!
これからも定期的に、誰も知らない映画マイナー国の隠れ優良映画を見つける活動をしていきます!